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2025年秋、新たに生まれ変わった国の重要文化財「旧三笠ホテル」

かつて「軽井沢の鹿鳴館」と呼ばれ、外国人や財界人の社交場として愛された「旧三笠ホテル」が、約5年におよぶ耐震補強を含む保存修理工事を終え、2025年10月に甦りました。

旧三笠ホテルのメインエントランス。外壁に残っていた痕跡や写真などをもとに復原しました
当時の調度品もそのままに、ロビーを再現

実業家・山本直良が、1906(明治39)年、軽井沢唐掘に創業した「三笠ホテル」は、建物の設計・監督・建築すべてを日本人が手掛けた木造の純洋風建築で、当時としては画期的な建物でした。開業後は乃木希典、渋沢栄一や団琢磨など、名立たる著名人が利用し、その華やかな雰囲気から「軽井沢の鹿鳴館」と呼ばれました。戦中戦後の営業休止時期を経て、「三笠ハウス」と名を変え営業を行っていましたが、経営難のため、1970(昭和45)年に惜しまれつつ営業を終了しました。

ホテルとしての役割は終えたものの、建築当初の姿のまま現存している非常に貴重な建造物であったため、1980(昭和55)年に「旧三笠ホテル」の名称で国の重要文化財に指定されました。また、建物が軽井沢町に寄贈され、一般公開されることとなりました。
その後は年間約7万人の観光客が訪れる軽井沢屈指の観光名所となりましたが、建物の老朽化が進んだこともあり、2019(令和元)年より耐震補強を含む大規模保存修理事業がスタート。2025(令和7)年10月に再び美しい姿を現しました。

歴史を感じさせる階段も補修して復原しました
耐震性を高めるため、新たに鉄骨で補強。鉄骨はクレーンで持ち上げて下まで通しました。一部の展示室ではその鉄骨を実際に見ることができます
敗戦後は進駐軍に接収され、扉や家具の一部が緑色に塗り替えられました。現在は復原されて元の色に戻っていますが、あえて緑色のまま残している調度品もあります
旧三笠ホテルの歴史や工事の概要、軽井沢町史も学べる展示室

課題だった耐震補強のほか、防災設備やエレベーターの設置、カフェ・ショップの新設などのリニューアルが行われ、より安全で快適な施設へと進化。また解体調査や古図面から発見された2つの車寄せを忠実に再現し、より大正・昭和期の姿に近い建物に復原されました。生まれ変わった旧三笠ホテルにぜひ一度足を運んでみませんか。

一部の部屋は、半日あるいは1日単位で貸し出しを行います(有料)
客室も当時の家具などを補修して再現。照明器具に施されたあしらいも豪華です
同時にバリアフリー化のためエレベーター棟を設置し、訪れた人が利用しやすくなっています

旧三笠ホテル

0267-48-6341
軽井沢町大字軽井沢1339-342
9:00〜17:00(最終入館16:30)
水曜・年末年始(12月28日〜1月3日)
25台
高校生以上1,000円、小学生・中学生500円
※軽井沢町に住所を有する方は半額