日本の中の西洋一とも呼ばれていた旧軽井沢エリアとは対象的に中山道の宿場町としての面影を今に残している追分通りの中程に「堀辰雄文学記念館」はあります。
堀辰雄は、日本で初めて実体験をもとに私小説とロマン主義と言われる形式を融合し、独自の文学世界を作り上げたといわれています。
日本の近代文学にフィクションとしての小説ジャンルを切り開き、最近ではスタジオジブリの「風立ちぬ」のベースになるなど、現代まで影響を与え愛されている作家です。
記念館入口はかつての追分宿本陣の門が移築され、真っ直ぐ続く石畳、両脇のカラマツやモミジの大木の森が参道のような静寂さで、一般的な文学記念館とは異なる独特な趣を醸し出しています。
記念館に着くとそこは入口とは全く異なり、開放的で明るく、広い芝生の敷地に堀辰雄が晩年定住した建物・展示館・完成に力を注いだ書庫などが点在しています。
入口の古き本陣門と明るい芝生の庭の記念館はどこか堀辰雄の二つを融合した文学スタイルと重なり合うところがあるように思います。
展示館には原稿・書簡・年譜や文学の背景などが公開されています。
十九歳で初めて軽井沢を訪れて以来、毎年のように軽井沢に滞在していた別荘などの興味深い資料も展示されています。
当時の軽井沢というどこかエキゾチックな空気感が堀辰雄を引き付け、「美しい村」や「木の十字架」など軽井沢を舞台にした多くの作品が生まれたのではないかと思います。
滞在が増すにつれ、旧軽井沢エリアから閑静な追分を好むようになり、終の棲家とした建物は細部に至るまで当時のままに保存され、読書中の堀辰雄が目に浮かぶようです。
敷地西側には完成を楽しみにしていた書庫がありますが、残念ながらわずかに蔵書が収まった庫内を見る事間に合わずこの世を去りました。
記念館周辺にはかつて堀辰雄をはじめ、室生犀星・立原道造らが常宿とし様々な文人が訪れ、交流の場となった旅館「油屋(現在は信濃追分文化磁場油やに改装)」があり、堀辰雄も「菜穂子」や「ふるさとびと」の作品で「油屋」をモデルにしたといわれています。
そのほかにも好んで散策した泉洞寺の石仏など、堀辰雄の日常を垣間見る事が出来る場所もあります。
時代の流れと共に徐々に寂れていった追分宿でしたが、反対に静けさを取り戻したことで堀辰雄をはじめ多くの文学者の創作拠点となり、現在までその余韻を残す軽井沢を代表する文学スポットとなっています。
インフォメーション
🏠所在地 北佐久郡軽井沢町大字追分 662
📞T E L 0267-45-2050
⌚開 館 9 時~ 17 時
時 間 (入館は 16 時 30 分まで)
休館日 水曜日(7/15 ~ 10/31 は無休)
水曜日が祝日の場合は開館
年末年始(12/28 ~ 1/4)
💰入館料 大人 400 円 こども 200 円
(団体割引有)