リゾートワークといえば軽井沢vol.02
ワークスタイルの変化が広がり始めていた近年。
新型コロナウイルスの感染拡大は、その動きを加速するきっかけとなりました。
オンライン化が急速に進み、場所を選ばず、仕事や教育を受けられる環境が整ったいま、これを機に自然環境豊かな場所へ移住を決める人たちも増えてきています。
そんな中、これまで人気のリゾート地として知られていた軽井沢が、都心からのアクセスの良さも魅力と大変注目を集めています。
実際に軽井沢でリゾートワークされている方々を取材しました。
東京都内の外資系企業に勤務
佐々木理恵さん
東京都内の外資系企業に勤務する2児の母。2年間の2拠点生活を経て2020年4月に東京から軽井沢へ移住、リモートワークを効果的に取り入れながら自然豊かな環境で新生活をスタートする。趣味は温泉、音楽鑑賞、テニス、息子との散歩。
interviewer ロイヤルハウジンググループ 上席執行役員
谷本有香
証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めたあと、米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事。Forbes JAPAN Web編集長。
幼稚園から中学校までが一体となった学校ができたことで、子育て中の若い世代からも、移住先として注目されている軽井沢。2拠点生活を経て軽井沢へ移住された東京外資系企業にお勤めの佐々木理恵さんに、軽井沢の魅力と移住して見えた課題について聞きました。
二拠点生活のきっかけと軽井沢の魅力
谷本 佐々木さんは2年半前から2拠点生活をされていますよね。2拠点生活を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
佐々木理恵さん(以下敬称略) 軽井沢の物件を探し始めたのは、1人目の子供を産んだ7年半前です。2拠点生活というよりは遊び基地を探すという感じで、当時はそこまで本格的に探してはいませんでした。ところが、2年半前に2人目の子供を出産したとき、産休・育休で仕事が数ヶ月休みになったんですね。これは今まで忙しくてできなかったことを考えるチャンスなのかもと思い、本腰を入れて軽井沢の物件を探すことにしたんです。何件も内覧をして、その度に家族で話し合いました。家族全員に響く物件に出会うまでには時間がかかりましたが、縁あって今の物件に出会い、全員一致で「ここにしよう」となりました。
谷本 いろいろな物件をご覧になったとのことですが、物件に求める条件はどのようなものがありましたか。
佐々木 夫はDIYが好きなので、DIYスペースがあるログハウスのような物件をイメージしており、落ち着いた雰囲気のなかで美味しいお酒が飲みたいという希望もありました。あとは車が好きなので、できればガレージが付いているところ。実際には今は平地に駐車しています。 一方、私の希望は緑がモリモリしたところ。自然豊かな場所が良いと思っていました。このように、2人の希望は完全に一致していたわけではなかったので、互いにどこかで妥協点を探っていくものだと思っていたのですが、2人の望みを満たす物件に出会えたことは幸運だったと思っています。内装も遊び心があり、ハンモックが上からかかっていて、当時5歳だった息子もすぐに気に入りました。
谷本 具体的には、軽井沢のどこに魅力を感じましたか。
佐々木 新しいことが始まりそうという、ワクワク感が大きいですね。例えば、2020年4月に幼稚園から中学校までが一体となった軽井沢風越学園が軽井沢町に開校しました。この学校は、私たちが親しみを込めて「慎さん」と呼んでいる本城慎之介が、森の中に2万坪超の土地を購入して建てた学校です。「自分の自由を実現し、相手の自由を認めよう」というコンセプトのもと、遊びを通して学んでいきます。この学校ができたことにより、実際に多くの子育て世代の家庭がこぞって軽井沢に集まりました。移住者のなかには様々な専門性やスキルを持つ多様な保護者が多く、そういう方たちが単なる保護者という役割を超えて軽井沢コミュニティに入り込み、町でおもしろいことを始めているのも魅力の1つです。
また、同じく2020年4月に「ほっちのロッヂ」という診療所もでき、教育現場にとどまらず、医療や福祉においても新しい取り組みが始まっています。医療、福祉、学校が備わることで、地方から元気になれるんだという実証実験を行っているような感覚があり、魅力度はますます高まっていると感じています。
移住するという決断。生活や家族の変化
谷本 佐々木さんは2拠点生活の2年間を経て、軽井沢へ移住されていますよね。前々から移住は検討されていたんですか。
佐々木 夫と長男は移住に対して積極的でしたが、私には正直迷いがありました。理由は主に仕事のことで、都内の自宅から会社までは車で15分でしたから、通勤時間が片道1時間半以上になるのは大変だなと。ただ、競技スキーが好きな長男が「学校に通い始めたら、放課後毎日スキーに行きたいな」と言っていて、素敵な夢だから叶えてあげたいと思ったんです。子供の夢を叶えることと、仕事を諦めないこと。この両方を満たせる軽井沢だからこそ、移住に踏み切ることができました。
谷本 ちなみに、新しい方がたくさん軽井沢へ来ることに対してはウェルカムな雰囲気なんでしょうか。
佐々木 ウェルカムな雰囲気だと思います。私自身も嫌な思いをしたことはありません。最初は「疎外感を感じるのかな」と思っていましたが、蓋を開けてみると全くそのようなことはなく、むしろ「子供がいると、新しい風が入ってくるから嬉しいわ」と言ってくださる方ばかりでした。
谷本 移住されて2ヶ月が経ちましたね。最初は不安だったという仕事はいかがですか。
佐々木 私たちが移住したのは、東京都が非常事態宣言を発令した数日前です。当初は週に2〜3回の頻度で都内に通勤する予定でしたが、コロナの影響により、100%在宅勤務になりました。今はこの生活にも慣れ、実感としては、お客様に直接お会いする必要があれば都内へ行き、他は必要に応じてオンラインで繋がれば、それでほとんど事足りるなと感じています。
谷本 移住されて、ご主人やお子さんたちに変化はありましたか。
佐々木 夫は大好きなDIYの時間を楽しんでいて、お庭にいる時間が増えました。軽井沢にはDIYショップがたくさんあるので、週末に通っています。夫が外でノコギリをひいたり、何か作ったりしていると、長男もおもしろそうにそれを見ていて、ときどき夫を手伝っているようです。夫は息子のできる範囲で「やってごらん」と作業を任せていて、それが息子の自信に繋がっています。息子はいろんなことに興味をもっているようで、描く絵も変わりました。以前は飛行機や車の絵ばかり描いていましたが、先日は工作の時間に斧を作ってきたんです。今、彼の中で大きな変化が起きているんだろうなと、息子を見ていて思います。
生活して見えてきた軽井沢の課題
谷本 軽井沢はどの面でも完璧なように感じるのですが、あえていうならどこに課題を感じていますか。
佐々木 私が子供を預けている軽井沢町内の保育園は、1番遅くて夜の7時まで子供を預かってくれます。でも、6時半や7時まで子供を預けているのは私だけなんです。そこで何を思ったかというと、軽井沢には若い女性がプロフェッショナルに働ける仕事が限られているのではないかと。軽井沢はリゾートワーク地としても注目を集めているので、専門性の高い職種の方やキラキラした方が東京からやってきますけど、一方通行のような気がしています。軽井沢に住む子育て中の女性たちが、高いスキルをもつ東京の人たちや彼らのプロジェクトに関われたらいいですよね。「学童をちゃんとつくってほしい」というような短絡的な要望もあるのですが、その課題の背景を考えたときに、そもそも学童のニーズがないんだろうなと思い、眠っているリソースを開拓することが課題だと感じました。キラキラと働いている30代、40代、50代の女性をもっと見たいですね。
谷本 最後にこれからリゾートワークをしたいと思っている方に向けてメッセージをお願いします。
佐々木 軽井沢に住む人たちは、新しい医療や新しい学校をはじめとした新しい取り組み、そしてそれらを中心とした新しいコミュニティ作りに、ワクワク感をもって関わっています。お子さんと一緒にのびのびと生活できる町でありながら、同時に、新しいことが次々と始まるエキサイティングな町でもあるんです。お子さんがいる方、ビジネスをされている方、何か新しいことにチャレンジしたい方にとっては非常に良い環境だと思います。