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テレワークをリゾート地で

リゾートワークといえば軽井沢vol.01

日本を代表する避暑地、軽井沢。
このリゾート地が、新型コロナウイルス直撃下、新たに脚光を浴びています。
標高1000メートルの避暑地軽井沢は、数年前から「リゾートテレワーク拠点」として注目されはじめました。

自然環境に恵まれ、東京から新幹線でわずか62分という地の利から、近年「仕事(ワーク)」と「休暇(バケーション)」を両立する「ワーケーション」に最適な場所のひとつとして、都会では得られぬ暮らしの潤いや、職場以外のコミュニティ、豊かな自然環境を求め、軽井沢へ移住する人も増えています。

また2023年3月には北陸新幹線(現在終着が金沢)が福井まで延伸(最終的には京都まで延伸)されます。そうなると、東京、軽井沢、金沢、福井が一本で結ばれ、さらに軽井沢の優位性は高まりそうです。

コロナショックにより、地球規模で行動変容が起きる中、今後、軽井沢の価値はどのように変わっていくのか、一般社団法人軽井沢ソーシャルデザイン研究所の鈴木幹一理事長に聞きました。

コロナショックによるワークスタイルの変化

谷本 コロナショックにより地球規模で社会変革が起こり、人々の価値観、生活習慣、ライフスタイル、ワークスタイルなどの行動が変容しました。それによって地方分散・移住などが進むだろうと言われ始めましたが、どのようになるとお考えでしょうか。

鈴木幹一理事長(以下敬称略) 昔から企業は自然災害リスク回避のため、特に生産拠点などを地方に分散する動きはありましたが、ウイルス蔓延リスクは想定していませんでした。今回のコロナショックを契機に、リスクの定義も変わりますので、様々なことが加速度的に変わっていくでしょう。

現にオフィス、ワークスタイルの見直しをする企業が出始めています。テレワークの普及によりオフィス機能縮小、通勤・出張の見直し、会社組織の見直しなど様々な角度から変革を求められてきています。

テレワークが導入されていなかった企業では様々な課題が出てきましたが、一方で通勤時間がなくなったことで時間が有効利用できる、家族との時間が増え会話が増えた、働いている姿を家族が見ることで家族から尊敬されたなどのプラス面も多く出てきました。

これからの世の中、今までのように経済優先型ではなく、人生をいかに楽しく過ごすかと言うライフスタイル重視型に価値観が進します。どこにいても仕事が出来る環境を作っていく事が企業に求められるのではないでしょうか。

これは住居の間取りにも変化をもたらします。これからは、ワークスペースを独立させた間取りが標準になっていくでしょう。軽井沢の新築別荘では、すでにその傾向が出始めています。

すべての条件が揃う最高のリゾートワーク地

谷本 「リゾートテレワーク」という言葉は、いつから注目度が上がってきたと認識されていますか。

鈴木 テレワークという言葉は、1990年代から使われ始めた言葉で、当時は在宅勤務とほぼ同意語でした。当時は仕事=会社という時代だったので、ほとんど普及していませんでした。

その後、PC、携帯電話の普及により、ワーク環境が大きく変化してきました。長期的には、国と政府が推進している働き方改革の柱の一つとしての豊かなライフスタイル実現の為のワークスタイル改革として、短期的には、東京2020開催に伴う交通混雑緩和策としてテレワーク導入が注目されてきました。

将来は全国的にテレワークが定着するだろうと思っていましたので、あえてテレワークという言葉ではなく、他地域との差別化を狙った、エッジの効いたネーミングとして、軽井沢でワークすることをリゾートテレワークと呼ぶようにした経緯がございます。

谷本 軽井沢は条件がいくつも揃っているので、最高のリゾートテレワーク地になったのでしょうね。

鈴木 野鳥の森がある、自然豊かな軽井沢では、いつもすぐ隣で野鳥が鳴いています。オンライン会議中でも、背景はいつも森の中で、時々鳥の声も入ります。こういう、森の香り、野鳥の声、新緑、紅葉、樹氷など、五感で感じる四季折々の自然の変化は東京ではなかなか感じられません。

夏は天然のクーラーで涼しく(7〜9月の平均気温は約20度)、冬も床暖房や薪ストーブで室内は暖かく過ごしやすい。一方、程よい都心感があるのもポイントです。レストランのレベルは東京と変わりませんし、何かあれば新幹線でたったの62分で東京に帰れてしまう安心感もあります。

また、圧倒的な人的ネットワークも魅力の1つ。軽井沢別荘の横のネットワークは昔からあり、さまざまなレイヤーで絡み合っています。東京都軽井沢、このようなオンとオフの切り替えのできるデュアルライフがますます注目され、同時にこういう環境で仕事がしたいという人は増えるでしょう。

真の「ワーケーション」とは

谷本 今後ワーケーションを取り入れようと思っている人、まだやったことがない人に向けてメッセージやアドバイスをいただけますか。

鈴木 ワーケーションというのは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語ですが、実際のところ、企業がバケーションのコストを負担するのは抵抗があり、難しいです。ですから、同じワーケーションでも、「ワーク」と「エデュケーション」。

つまり、新人研修・管理職研修など、企業研修の機会として捉えたら良いのではと考えています。例えば、軽井沢にはカーリング会場があります。また小諸市・上田市・東御市など近隣自治体にはワイナリーがあります。

それらはチームビルディングのプログラムに活用されています。実際、金曜日にチームビルディングや研修で軽井沢に来て、翌土曜日にワイナリーや温泉に行くといったプログラムを実行する企業も増えています。レジャーやバケーションではなく、あくまでチームビルディングや研修に軸をおくのも1つの案ではないでしょうか。

谷本 素晴らしいですね。

鈴木 軽井沢は昔から学びの場でした。明治19年にはカナダから布教活動に宣教師がやってきた。その後、華族や政財界のトップが軽井沢に別荘を構えました。

地元の人々がそういう人たちと触れ合うことで、皆見聞を広めてきたのです。宣教師の布教活動、小説家やアーティストの創作活動、政財界の方々の会議、そのすべてはテレワークです。

かつては「なぜ、リゾート地で仕事をするのだ」というご意見をよく耳にしました。歴史を振り返ってみても、軽井沢はテレワークの聖地と言っても過言ではなく、ワークに最適な場所だと言えるでしょう。

谷本 軽井沢では最近ワークスペースが多くオープンしたと聞きますが、どのようなワークスペースでしょうか?また、どのような仕組みで利用できますか?

鈴木 軽井沢には地元の方・移住者・二拠点居住者・別荘所有者・観光客など様々な人がいますので、ワークスタイルも多種多様です。それに対応するために、様々なタイプのワークスペースがあるのが軽井沢の特徴です。

現在軽井沢には、20近くのワークスペースがあります。ワークスペースの形態は大きく分けると、オープン型とクローズ型に分かれます。オープン型は、飲食店、ホテルに併設されているケースが多く、入場が自由で誰でも使えるコワーキングスペースやワークコーナーです。利用は時間制や飲食が条件など様々あります。

またクローズ型は、会員制コワーキングスペース、サテライトオフィスや、特定の企業だけしか使えないサテライトオフィス、コワーキングスペース、ミーティングルーム、保養所などです。

最近の東京のワークスペースの傾向として、情報漏洩など企業のセキュリティーに配慮したクローズ型のワークスペースが増え始めてきています。軽井沢でも不特定多数を対象としない、会員制や自社使用のワークスペースが今後増えてくるかもしれません。

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一般社団法人
軽井沢ソーシャルデザイン研究所  

鈴木幹一理事長



interviewer ロイヤルハウジンググループ 上席執行役員
谷本有香      

証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めたあと、米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事。Forbes JAPAN Web編集長。