夏には蛍の舞う清澄な湧水
開けた大地を吹き抜ける浅間山からの冷涼な風
標高1,000mの高原地帯が作り出す寒暖差と陽光で
真っ赤に育った 軽井沢高原いちご
年間通して複数種類のいちごの食べ比べができる軽井沢ガーデンファームさんにお話を伺いました。
品種の特性と管理が決め手。一年中楽しめるいちご狩り
寺島 このハウスはどれくらいの規模でされているんですか。
横地秀典さん(以下敬称略) 冬の一季成りの方で4500㎡ですね。4反5畝って言われる規模なんですけど。夏の方が2000㎡。合わせて6500㎡の栽培面積です。
寺島 その中で、何種類くらいのいちごを栽培されているのですか?
横地 10種類くらいですかね。いちごは基本的に春にしか花が咲かない「一季成り」と、春夏秋冬のオールシーズン花が咲く「四季成り」という品種で大別されます。一季成りの品種を夏に作ろうとしても、春にしか花が咲かないので実がならないです。日照が長くなってきて気温が高くなってくると、ランナーという茎を出します。それが土に着くと根っこが出て、新しい株ができていくんです。夏場はこれで株を増やす。日が短くなってくると、ランナーが出にくくなってきて。日長や気温によって、花を咲かせて実をつけるか、ランナーを延ばして株を増やすか、いちご自身が判断します。
寺島 自分で判断するんですか。すごいですね!
横地 そうですね、その辺の管理を人がちょっと手助けしてっていう感じです。
寺島 このハウスで春に花が咲くものを一年中楽しめるということですか?
横地 ここが6月いっぱいまでですね。日照が長くなってくると、軽井沢といえども暑くなってくるので、花が咲かなくなってきます。なので、7月から四季成り、夏秋(かしゅう)いちごのハウスの方に移ります。
寺島 一年中となると、ハウスの管理とか難しそうですよね。どのように管理されているんですか?
横地 人の手で管理しなければならないこともあるのですが、施肥関係と温度関係は自動制御して、なるべく省力化しています。畝の真ん中にホースが入っていて、天候と株の様子を見ながら、水と肥料をコントロールして。だいたい一株当たり一日何グラムの窒素量が必要か計算して与えています。
寺島 品種によって温度なども変えているんですか?
横地 このハウスでは8種類の一季成りいちごを栽培しており、空間が繋がっているので温度管理は一緒になってしまうのですが、肥料管理は品種によって分けていますね。水をすごく吸う品種もあれば、肥料が濃い方がいい品種があったり、同じいちごと言えども8品種あれば8通りの栽培方法があって、それに適した形でやっていくという感じですね。
寺島 経験などが蓄積されているから、そういった調整ができるんですね。
横地 管理の面から一つの品種でやられている方が多いと思いますが、うちの場合は観光で食べ比べを楽しみに来ていただく方が増えてきているので、色んな品種、さらには毎年何か目新しいものがあればトライして種類を増やしています。
利便性と安全性、衛生面…多方面に考慮された工夫
寺島 そういえば、高い位置にいちごが植わっていますね。
横地 高設栽培にしています。これは虫の被害を避けたり、大雨でハウスの中が浸水してもいちごは守られるように。一番は従業員の作業効率という面で、立ったまま台車を押しながら作業できるというところですね。グラウンドだとどうしてもしゃがんで作業することになるので、体力的にも辛くなってしまう。
寺島 どの辺のいちごが成熟しているっていうのがわかりやすくていいですね。お子さんも取りやすいですし。
横地 ちょうど目線の高さにいちごがバーッと連なって、子どもにはすごく喜んでいただけますね。土も付かないので、なるべくクリーンな状態でそのまま取って食べられるのも良いところです。
寺島 確かに、洗わなくても全然綺麗ですよね。他にこだわりはありますか?
横地 減農薬というところで、黄色と青の虫プレートって言うんですけど、粘着のもので直接虫を退治して、極力薬は使わないようにしています。
寺島 良い匂いがするから、蜂だけじゃなくて色んな虫が来ちゃいますよね。
横地 春先になるとハウスを開けることがあるので、外から虫が入ってきてしまう。それをなるべく増やさないように。あと、天敵をうまく利用しています。葉ダニと言って、いちごにすごい悪さをする害虫がいるんですけど、その害虫をやっつけてくれる天敵がいるんですよ。この子はいちごには悪さしない。アブラムシだとテントウムシを入れてあげると、食べてくれます。早期に発見すれば天敵をそこに導入して被害を最小限に抑えられるので、薬を使わずに済む。
寺島 結構虫の働き手が多いんですね。今飛んでいるハチもそうですよね。
横地 マルハナバチという仕事仲間ですね。受粉はハチにお任せしています。気性が優しくて。昔ミツバチも使っていたんですけど、どうしても刺される方が年に何人かいらっしゃるので。苗の両側の高さ15~20㎝に紐を張って葉っぱをかけて、通路側に花を出してあげることで、ハチが花を探しやすくしています。これによって実も通路側に生ってくるので、人も取りやすいという工夫がされています。
寺島 その黒い紐はそういった意図があったのですね。
横地 品種によって見比べていただくとわかるように、例えば「かおり野」という品種は上に成長する立性で、逆に矮性と言ってY型のペタッとした品種だったり、いろいろ特徴があります。立性だと葉っぱが茂ると実も見えなくなるので、取り残しが出てしまう。それが傷んで菌が湧いたり、虫がたかったりと不衛生な状態になってしまうので、そういうリスクを減らす役割もあります。
寺島 通気性が悪くなるとそれも虫や菌が発生する要因ですもんね。
頂花房(ちょうかぼう)といって、最初に咲く花の実が一番大きくなります。いちごはぶら下がっているため、下に引っ張ると取りにくいので、ひっくり返すと取りやすいです。先端が甘いので、ヘタを取ってヘタ側から食べていくと、全部美味しく召し上がっていただけます。夏に取れる「軽井沢サマークイーン®」は信州大学で開発され、酸味が入りやすい夏秋いちごの中でも甘みがあり、生食でも美味しいのでオススメです!
完熟による美味しさの追求。こだわりの無添加ジャム
寺島 こちらでもジャムなど加工品を作られていますよね。
横地 保存料などは一切使わず、いちごとレモン汁とグラニュー糖だけで作っています。完熟のいちごを使用することでいちご自体の風味がすごいあるので、ご好評いただいてます。
寺島 いちご自体が美味しいですもんね。
横地 やはり糖の転流が重要になってくるので、日照と寒暖差によって美味しいいちごができるというところですね。軽井沢ですと6月くらいまで寒暖差があるので、他の地域より長く美味しいいちごが楽しめます。
寺島 それ以降は夏秋いちごが始まるということですね。他のお店ともいろいろコラボレーションされてますよね。
横地 最初、夏秋いちごの需要があったのですが、一季成りの方も購入していただくということに繋がってきて。個人のケーキ屋さんから始まって、サダハルアオキさんにも気に入っていただけて。
寺島 贈答やお土産でも「軽井沢」って入っていると選びやすいです。
横地 軽井沢の知名度とハイブランドなイメージを上手く使って、みんなに知っていただくこともできるかなと思っています。「軽井沢のいちご」ということで知名度が上がっていくといいですね。
真珠姫(白いちご)
熟した白桃のシロップ漬けを思わせる、とろける香りと甘い果汁を楽しめるいちご。完熟のサインの見極めが難しく、食べ放題ではお楽しみいただけません。
紅ほっぺ
甘みと酸味のバランスがとれた豊かな香りと美しい形の品種。
かおり野
果肉は白色で、酸味を感じることはなく、甘みと香りを存分に堪能できるジューシーな品種。
恋みのり
恋が実るようなぷっくらと可愛いハート型のいちご。果肉が白く、いちごミルクのようにクリーミーな甘い果汁と柔らかい酸味が印象的です。
真紅の美鈴(黒いちご)
収穫量が少なく希少な品種。アントシアニンが豊富でとろける甘さと特別な香りが特徴。
軽井沢ガーデンファーム
〒389-0013
軽井沢町発地2062-1
TEL:0267-48-3620 (9:00-17:00)
MAIL:gardenfarm@aipy.co.jp
HP:http://www.aipy.co.jp/
《営業時間》
冬春いちご狩り 10:00-15:00(最終受付)
夏秋いちご狩り 9:00-14:00(最終受付)
《料金 大人(中学生以上)》
スタンダード食べ放題コース:2,300円
プレミアム食べ放題コース:2,800円
コンプリートコース :5,000円